耳下腺腫瘍で手術をした話

先月に手術をしてから早1ヶ月が経ち、そのときの記憶も遥か彼方に行きつつあるが、記録としてやはり残しておこうと思う。

  • 診断まで

耳の下に大きなコブが出来ていたのは3年以上前だという。コブができ始めたことに自分では気付かず、周囲の人にコブがあるけど大丈夫なのと聞かれたときにはそれなりのサイズになっていた。

当初は、痛みも麻痺もないことからそこまで気にしておらず「粉瘤か何かだろう」と思っていたし、病院に行く時間もそれほどなかったので放置していたのだが、いつまで経ってもコブはなくならず、しかもそこそこのサイズだったので、諸々が落ち着いた頃に近くの病院に行くことにした。

この時に自分の症状してみるとインターネットで検索してみると「耳下腺腫瘍」「手術必須」とあり不安が襲う…

  • 診断

近くの病院に行ったのが2017年の2月上旬。2時間待たされたあげく初見で「それはおそらく腫瘍」と宣告される。ただその病院は耳鼻咽喉科の専門医療機関ではなく、より詳細な診断が受けられる拠点病院を紹介される。

紹介を受けて2日後にその拠点病院へ。触診とエコーから「おそらく腫瘍」との診断。2月中にMRICTスキャン・穿刺の予約をとる。それぞれ別日に行うので結構面倒だったが仕方がない。

  • 検査

MRICTスキャンは造影剤を投入した形。点滴だったので緊張が走るも特に何事もなく終了。MRIは確かにうるさいし怖い。閉所恐怖症だったら泣いてた。

穿刺は担当医が腫瘍の部分を針で刺して検査するもの。ただ局所麻酔がかかっていたのか?全く痛みを覚えることもなく終了。

  • 検査結果~入院

検査の結果は多形腺腫。良性で他に異常もなかったが、腫瘍自体のサイズが5cmもあり、あと5~10年放置すると悪性変異の可能性ありとのこと。3月末に入院・手術を行うことに。

検査結果を聞かされたその日に採血・レントゲンなど術前検査をし、1週間後にその確認。検査結果は問題なく2週間後手術が決定。それなりの大きさなだけに予定時間は5時間。顔面神経の短期麻痺も発生の可能性が高いとのこと。結構大変だ…

  • 入院~手術

手術の前日10時に入院し、病室へ。手術当日担当になる看護師さんや麻酔科医の方、また担当医の方が挨拶に来る。午後シャワーを浴びる機会があったため身体を清めておく。病院食もそれなりに美味しいが翌日は飲み食いも出来ない。

前日21時より食事禁止、当日6時より飲むことも禁止。手術用のふんどし?と手術着風の浴衣に着替えておく。8時に担当医の診察を受け点滴がスタート。10時からWBCの準決勝日本vsアメリカ戦が始まるなかなかキツイ試合だなあと思っていた矢先に看護師さんから声がかかり、11時より予定通り手術が始まるとのこと。

付き添いの家族と共に手術室のある棟へ。待ち合い室に残る家族に眼鏡を預け手術エリアに入るとロビーのようになっており、そこではキャップを付けた看護師さん2人からご挨拶。自らもキャップを付け、自分の手術室に向かう。人生でも滅多に見ることのないゾーンだったので色々と観察したかったのだがいかんせん眼鏡がないので全く見えないw 

そうこうしているうちに、自分の手術室へ。噂通りリラックスできそうな音楽が流れている。台の上に横になり器具が取り付けられマスクが装着。「痛み止めの薬ですがご気分大丈夫ですか?」と看護師さんに問われ「大丈夫で~す」と気楽に答えていたのだが看護師さんの返答がなくジッとこちらを見ている。ん?これはもしや麻酔?と思ったときには意識はなくなっていた…

 

次に気づいたのは、休憩室?のような場所。隣で昨日挨拶した看護師さんが声をかけてくれる。意識が混濁していてまだよく分からない。担当医の方が声をかけてくれて、取った腫瘍を見せてくれたような気がする。ただ眼鏡がないので何も見えない。

麻酔から醒めてくる途中で吐き気をもよおし嘔吐してしまう。可愛らしい看護師さんに「大丈夫ですよ~」と言われながらお世話をされ思わず「すみません…」と言ってしまう。人間は無力だ。

しばらく休憩室で休んだのち自分の病室へ。先程の可愛らしい看護師さんが運んでくれるのだが、道がなかなかガタガタで操縦もワイルドなので完全に乗り物酔いし、病室に到着してまた嘔吐。今度はあんたのせいやぞ。吐き気止めの点滴を入れてもらうことに。

ふと聞くと手術は予定より早く3時間で終わったらしい。なんでも腫瘍が顔面神経からかなり遠い位置にあり、取りやすかったとのこと。これは良かった良かった。しかしその間に侍ジャパンはアメリカに敗北を喫していた。

 

手術が終わり6時間安静。眠ったり目を覚ましたりを繰り返して、だいぶ落ち着く。6時間が経ち、夜勤の看護師さんから「トイレに行ってみますか」と言われ、ベッドから起き上がりトイレへ。ふらつく?かと思ったのだが意外に何事もなくしっかりとした足取りで一安心(看護師さんも「ふらつく人が多いんですけどねえ~」と言っていたので結構レアケースかも)。そのときに初めて鏡を見て自分の状態を確認。包帯が幾重にも巻かれていて、ドレーンも取り付けられている。顔の動きを確認したところ、確かに腫瘍があった方向への動きは鈍く歪んだ感じ。でもそこまで気にならないしどうにかなりそう?

 

そういえば他のブログの方で「術前の浣腸」「尿道カテーテル」がツラいものとして挙げられていてこれは確かにイヤだな~と思っていたのだが、今回の入院ではこれらはなくて非常に良かった。病院の方針かもしれないし、前者は自分の排便の状況、後者は手術時間の短さも影響しているのかもしれない。

  • 術後~退院

手術翌日からやっと食事が解禁。口の動きがどうかと心配していたのだが特に問題なく痛みもなかった。24時間ぶりの食事は感動もの。

術後は朝8時の診察と点滴の交換以外は特にすることもなく、甲子園中継→国会中継大相撲中継NHKを一日中見て過ごす日々だった。

顔面神経の麻痺は殆ど出ず、術後の夜に歪んでいると感じていた顔の動きは、日に日に元通りに近づいていった。術後3日後にドレーンや点滴が外れるなど経過はかなり順調で、術後4日後に傷に当てていた圧迫(包帯のグルグル巻き)が解除。その日にはシャワーを浴びれるようになり、1週間入院の予定から2日短縮された術後5日目の朝に退院することができた。

  • 退院後

退院後しばらくすると傷跡でピリッとした痺れと、食事を取ったときの痛みを微かに覚えるようになった。ただ耐えられないというほどでもなく、時間の経過につれてそこまで感じないようになっている。

傷跡を陽に当てない方が良いとのことで、退院してしばらくは関節サイズの大きな絆創膏を貼っていた。ただ、傷の部分は縫合するのではなく手術用ボンドで接着されていたようなので、傷跡はスムーズに回復し、かさぶたのような形でボンドの跡も剥がれていった。3週間後ほどして傷跡が引っかき傷程度の目立たないものになったので今は絆創膏も特に貼っていない。

退院後1週間して、術後の診断。病理検査の結果で腫瘍は良性だったとのこと。ホッと一安心。ただ多形腺腫は再発の可能性があるので数ヶ月は通院する必要があるらしい。

  • 費用

入院までは、MRICTスキャン穿刺と、その他術前検査などで合わせて3万円ほど。入院費は高額医療費の限度額適用認定を受けて18万円ほどだったが、生命保険でかなりの額が返ってきたので、そこまで大きな負担にはなっていないはず。ただテレビカード、おめえは高すぎだ。

  • 手術を終えて

確かに手術を受ける前は面倒くさいし怖いし何で至って元気なのに入院しないといかんねんと気分は最悪だったのだが、いざやってみると手術も入院もあっけなく終わってしまい、なんとなく気になっていた腫瘍もすっかりなくなっていてスッキリしている。ただ、今回は腫瘍の位置が顔面神経から遠く離れているという幸運からかなり順調に回復したものの、通常はサイズが大きいと手術が難航してしまうし後遺症のリスクも出てしまうらしい。やはり病院には早めに行っておいた方が良さそう。

そして、もう一つ、人間は無力であるということ。どれだけピンピンしていても、立派な経歴や学歴を持っていたとしても、みんなからチヤホヤされていても、人はあっけなく無力になり他人の助けを得ないと生きていけなくなる。でも無力になったからといってそこで人は終わりではなく、そこから回復して元に戻ることもできるし、無力になってしまっても無力になったなりに人生は続いていく。そんな時に助けてくれる他人は大切にしなければいけないし、看護師やお医者さんたちは(それが仕事とはいえ)最後の砦として無力になってしまった人を助けてくれる。それもまた社会の本当の姿だし、それを見なければ社会とは言えないのだと思う。耳の下にあった邪魔なコブは、そんな当たり前のことを気づかせるために、僕の前に現れたのかもしれない。